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スペイン語文法 番外編 (第一編)

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Monólogo de un pasota == Serie II -10 ==
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『馬耳東風』 第二編 (スペインの政経社編) 第10話

『スペインの治安』 (その3)

  スペインの治安問題を取り上げ、まずは日本人らしく己の反省から...とやや大仰に書いてはきたものの、肝心の正確な統計はどこになるのか?と、統計の信頼性を考察するはめになってしまった。そんなわけで、結局のところ、未だ本題に入れず、大変遺憾な状況に陥っている。しかし、このままではまったく話も進まず、また、この章も完結できなくなるので、一応、この先は内務省のデータを使用することとし、これに沿って話を進めることにしよう。

  前号でも申し上げたように、内務省の発表によると、2000年にスペインで発生した犯罪の件数は1,789,990件だ。そして、昨年の2001年には、この犯罪発生率(indice delincuencial)が10%超の伸びを示し、1,976,000件に増えた。日本での同年の犯罪の伸び率は、対前年比で12%の増であるので両国の増加率は同じくらいである。しかし、総数では、日本が2,735,612件だあり、両国の人口に対比させてみると、スペインでの犯罪は日本の倍くらいあることが分かる。つまり、スペインでの犯罪発生率から算出すれば、日本では、年間約600万の犯罪が発生していなければならない計算になるわけだ。ともあれ、スペインでの犯罪認知数の内、逮捕までに至ったのは232,147件だったので、検挙率は12%未満(同日本19.8%)ということになるのだが、対2000年比では3.6%の伸びを示している。よって、数字の上では状況は良くなっている。

  さらに、内務省の報告書には、凶悪犯罪に関しては、何と90%弱が解決されていると記されているので、少々安心した。なぜ安心したかというと、治安が良いので有名(?)なはずの日本の凶悪犯罪の検挙率は、1999年こそ71.5%だったが、2000年には60.4%、2001年には53.0%と急激に下降をたどっているからで、スペイン内務省の報告が正しいものだとするならば、日本はけっして安全な国ではなく、この点においてはスペインの方がより安全 (実際の犯罪は起こるのだから、現実には安全ではない) というか、少なくとも、凶悪犯罪者の犯人逮捕という点ではスペインの方が優秀だということになる。これらの数値を逆の観点(つまり、犯罪者の目)からみれば、凶悪犯罪なら日本で、一般犯罪ならスペインでやれば、それぞれ捕まる可能性が低い、という実体が浮かび上がってくるわけだが、けっしてそうした方がいいなどと言っているのではないので、念のために。

  さて、ここで実に興味深い事実をご紹介しておこう。それは、2001年に起きた1,976,000件の犯罪のうち、約250,000件がインターネットを介して訴えられた(届出がされた)事件だったことだ。この方法であれば、わざわざ警察署に出かけて行き、訴えを起こす場合にしなくてはならない何かとややこしい手続きもする必要はないわけで、実に簡単(安易)に通告(届出・訴え)することができるからだ。つまり、別の見方をすれば、もしこの手軽な手段がなければ、訴えさえもなされなかった犯罪が多いのではないのか?だからこそ犯罪率が高くなっているのではないのか?とも考えられる。しかし、この簡易な方法での訴えが、いわゆる刑法に触れる正真正銘の犯罪なら、その犯罪の実数には何らの変化もないことになる。このあたりの実体になるとまったくデータでは判別がつかない。因みに、スペインでの2001年の殺人事件は1,200件(同日本1,340件)で、対前年比で40件の増加を示している。ここでも人口比での突出したスペインの数字が少々気になるところだ。(...続く)(文責:ancla)
 
  以上は、本塾のメールマガジン『e-yakuニュースNo.24(2002年10月末号発行)』に掲載されたものです