e-添削入口 受講料 添削例 申込み e-Mail FQA
システム コース 無料レベル・チェック 講師紹介 通学塾 CASA

スペイン語文法 番外編 (第一編)

馬耳東風 (第二編) スペインの慣用句 (第三編) マヤ暦のページ


===========================================
Monólogo de un pasota == Serie II -12 ==
===========================================

『馬耳東風』 第二編 (スペインの政経社編) 第12話

『スペインの治安』 (その5)

  さて、今回でこの『スペインの治安』のテーマを終えなければ、もう永遠に終わらないような気分になってきた。しかも、スペインにとってあまり都合の良いテーマではなく、心情的には目をつぶって通り過ぎたいテーマでもある。ともあれ、このテーマを終える前に、本テーマに関連する新しい側面にも少々触れておこうと思う。

  昔(10年くらい前)のスペインをご存じの方ならおわかりだと思うが、当時のスペインには民間の『警備保障会社』というものはほとんど存在しなかった。ところが、今はビルの中はもとより、至る所に『ガードマン』の姿を目にする。もっとも、大都会の、しかも中心部だけの光景なのかも知れないが...。因みに、この民間警備保障会社の経済効果は、けっして無視できないまでに大きく膨れ上がり、年々上昇の一途をたどり、2001年には約14.5億ユーロ(≒1,842億円)の収益を上げた。一方、同企業の数も増加しており、2001年12月末時点で930社(960以上というデータもある)だったから、今なら1000社は越えているかも知れない。

  スペインもご多分に漏れずグローバル化を目指していることから、こうした世界的傾向の一端が現れているのだと言ってしまえばそれまでなのかも知れないが、国民党が政権についてからこの種の企業が急増したことは事実だ。昨年(2002年7月16日)行われた恒例の『Debate sobre el Estado de la Nacion(国事討論会)』で、野党第1党の社会労働党書記長サパテロは、「スペインでは、1986年から警察官が7,000人減少した一方、民間のガードマンは、なんと50,000人も増加している(著者注:2002年のガードマンの総数は約7万人、公共の警察関係者は約19万人)」と、アスナール首相に迫った。

  少々横道にそれるが、この国会討論で治安と外国移民の二つの問題も議題に取り上げられたことは言うまでもない。もっとも、『治安・外国人犯罪・移民』の3つの問題は、同討論会では個別の問題として取り扱われた。『治安』問題に関しアスナール首相は、「釈放中の容疑者が犯罪を繰り返すことがないよう」に、刑事訴訟法の見直し(裁判のスピード化などを含む)を約束する一方、サパテロの指摘に対しては、「2年間で警察官など(国家警察+治安警備隊)を20,000人増強する」と述べた。また、『外国人犯罪』については、「6年以内の刑を言い渡された外国人の国外追放手続きを簡素化するよう努力する」と述べた。また、『移民』問題に関しては、「スペインはまだ移民を受け入れる余裕がある。そのための法改正を再度実施する」と、『大国』スペインが抱えるジレンマをも同時に露呈した。

  治安に関する実情はこれまでにも述べてきた。その裏には、警察官の減少問題も潜んでいたのである。スペインで最も信頼できる調査研究を行っている社会学研究所(CIS)の調査では、98〜98年当時、『国民の心配事』の中に、『治安』を挙げる人は皆無であったのが、2000年には突然10%近くの人々が治安を心配しだした。そして、翌年、つまり昨年の2002年には、この数値は20%を越えた。如何に急激に治安が悪化しているかがわかる。もっとも、フランスでの同様の調査では、この数値は60%であることを考えると、この点でもまだまだスペインは先進国からは遅れをとっているようで、ことこの事に関しては、是非このままの遅れを維持してほしいと願うのは小生だけではないだろう。(このテーマの終了)(文責:ancla)

  以上は、本塾のメールマガジン『e-yakuニュースNo.27(2003年01月末号発行)』に掲載されたものです