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スペイン語文法 番外編 (第一編)

馬耳東風 (第二編) スペインの慣用句 (第三編) マヤ暦のページ


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Monólogo de un pasota == Serie III -03 ==
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第三編 『スペインの慣用句』 (その三)

   前号では、体の部分がキーワードとなった慣用句の特集をしましたが、今回ももう少しこの身体に関係した単語が使われた慣用句をみてみましょう。

1. 『estar hasta el moño』・『estar hasta la coronilla』

   『moño』は、特に女性(最近は男性でもたまに見受けられるようですが)が髪の毛を束ねてアップに巻いた『ダンゴ』状態の髪型のことです。直訳すれば、後頭部に束ねられた『その部分のころこまでいる』ですが、これでは何のことかさっぱり理解不能です。しかし、『estar』が『hasta』を伴っていることを考慮すれば、『その部分まで来ている』と考えられます。日本語でも、『頭に来る』とか『鶏冠に来る』言いませんか?スペイン語のこの慣用句もこれに似た意味です。前述の日本語慣用句の場合は、かなり怒っている、つまり、『怒り・憤慨』しているニュアンスが出てきていてややもすると暴力的な行為まで予測されるのですが、スペイン語の場合は、そこまでの意味はないようです。したがって、訳としては、前後関係から、『頭に来る』・『鶏冠に来る』でも良い場合もあるでしょうし、もう少し穏やかな『もう、イヤ』・『もうウンザリ』となる場合もあるでしょう。

   例) Estoy hasta el moño de tanto tener que trabajar.
      (こんなに働らかなあきゃいけないなんてもうウンザリだ)

2. 『calentar las orejas a alguien』

   直訳では、『誰かの耳を暖める』となっていますが、まあ、実際にそのような状況もあるかも知れませんが、慣用句としての意味は異なり、『(誰かを)叱る』ことです。但し、叱る場合にはその相手の過失を戒める・懲らしめる・罰すると言うニュアンスが込められています。したがって、日本語の慣用句で言う『大目玉を食らわす』ではなく、『油を絞る』に近いものがあります。

   例) Ése lo que necesita es que le calienten las orejas.
      (やっこさんに必要なのは戒めなんだ)

3. 『cerrar el pico』

   『el pico』は鳥のくちばしですから、『くちばしを占める・閉じる』ということになり、これの意味はだいたい想像がつくでしょう。ピーチクとうるさく鳴く鳥たちのくちばしが閉じてくれれば静かになってほっとしませんか?そう、その通りです。意味は『黙る』ことですので、命令としての用途が多いようです。同じ意味・用法で『abrocharse el pico』と言う表現もあるのですが、命令形としてはやや長すぎてもたつきが感じられ、あまり適当とは思われません。

   例) ¡Tú cierra el pico!
      (お前は黙っていろ!)

4. 『de a pie』

   これは、我々日本人の目からは実に厄介なスペイン語の表現の一つでしょう。ただでさえ前置詞には頭を悩まされる我々なのに、この表現には前置詞が二つもついているからです。したがって、この表現だけでは直訳などしても意味をなさないわけですが、あえてするとすれば『足にの』ということになるので、何のことかさっぱり判りません。しかし、ちょっと待って下さい。『pie』の前に来る前置詞によって色々と複雑に意味が変化することを思い出して下さい。つまり、我々日本人がしばしば困惑させられる、『de pie』だったのか、『en pie』だったのか、『por pie』?なのか(それぞれの意味は辞書でお調べ下さい)です。『a pie』はよく『de pie』と間違いませんか?『a pie』は『徒歩で・歩いて』という意味です。したがって、それに『de』が付いているわけですから、『歩く人の』ということになります。
   ちょっと説明がしつこくなりましたが、慣用句としては『普通の市民・ありきたりの人・一般市民』を指す表現なのです。つまり、金持ちは車で行き、貧乏人は歩いて行く、からでしょうか?そうですね、「遠からず」です。実は、この慣用句の起源は軍隊用語です。昔軍隊では歩兵『infantería』のことを軽蔑的にこのように呼んだそうです。

   例) Todos somos ciudadanos “de a pie” para muchos políticos.
      (多くの政治家にとって我々は『とるに足らない』市民なんだ)

5. 『gastar saliva』

   『唾をつかう』という訳(理解)をしてしまうと、切手でも貼るのかな?ということになってしまうのですが、『唾を浪費する』と理解すれば、何だかこの慣用句の意図が掴めそうな気がしませんか?訳というのは、ちょっとしたことでお先真っ暗になったり、目の前が急に開けてくるものです。つまり、頭脳を柔軟にする必要があるわけです。『唾を浪費する』のは意味のないもったいないことですから、これは『無益な話をする』になります。つまり、無駄な労力というか、この場合は、話し相手に向かって意味のない意見をしたりするときに使ったりします。日本語の慣用句で言うと、これはもうかなり沢山ありますよね。『釈迦に説法』・『骨折り損のくたびれ儲け』・『労して功なし』等々です。

   例) ¡Para qué voy a gastar saliva contigo, si al final harás lo que tú quieras!
      (どうせ最後は自分のしたいようにするのに、あなたと話すなんて、何故そんな無駄骨を折らなきゃならないのよ)

6. 『no llegar la sangre al río』

   これも直訳すれば大変なことになると言う典型のような表現で、本当に『川に血が流れ届く』などと言うことは、まさにありそうにない話で、だからこそ否定形になっているのだろうが、いずれにしても、一度聞けばそのままの意味ではなく、慣用句だとはっきりと分かるのでありがたい。もっとも、さてその真意となればこれはまったく別問題。スペイン語には実に大げさな表現が多いが、これもその代表格だろう。簡単なところでは、『あそこには何度も行ったことがある』というのに、『Ya he ido allí cuarenta mil veces.』などと、その数の多さを具体的に出し相手を驚かせたりする。無論、4万回も行ったわけはないのだが...。
   この『no llegar la sangre al río』は、『no』を付けずに肯定でも使用されることはあるが、これは希で、基本的には否定形で『大変なことにならない・取り返しが付かないようなことにならない』という意味で使用される。

   例) Las amenazas fueron terribles, pero no llegó la sangre al río.
      (脅迫は相当のものだったが、大事には至らなかった)

   今回はここまでです。読者諸氏からのご質問・ご意見をお待ちしております。 (文責:ancla)


   以上は、本塾のメールマガジン『e-yakuニュースNo.18(2002年4月末発行)』に掲載されたものです

 

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