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スペイン語文法 番外編 (第一編)

馬耳東風 (第二編) スペインの慣用句 (第三編) マヤ暦のページ


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Monólogo de un pasota == Serie III -04 ==
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第三編 『スペインの慣用句』 (その四)

  前号まで2回にわたって人間の体の部分をキーワードとした慣用句の特集をしてきましたが、今回は、動物の名前が入った慣用句をみていきましょう。動物の名前といっても、ポチ君だとか三毛ちゃんのことではありません。

1. 『estar como una cabra』

  まずは《cabra》です。山羊(ヤギ)のことですが、いつものように、まずは直訳でアプローチしてみますと、『山羊のようでいる』となります。『いつも紙を食べている人のこと』を指してこう言うのでしょうか?この慣用句は日常会話でも実によく使用されるからです。慣用句の意味としては、『頭のおかしい』ということなので、「お前はバカだ=¡Eres tonto!」と言うよりは、ずっとソフトで間接的な表現だからです。そこで、使用例は次のようなものになります。

  例) Para poder vestirse de esa forma hay que estar como una cabra.
    (あんな服装をするなんて、頭がおかしいんだよ)

  それにしても、スペインでは、山羊は想到バカな動物だと思われているのでしょうか(チーズ【queso de cabra】は美味しいのですがね)。一方、「少々まともでない、みだらな女性(mujer frívola)」のことを俗っぽく言うと、やはり、《cabra loca》と表現されます。《cabra》だけでも頭のおかしいという意味なのに、さらに輪を掛けるように《loca》を付けて念を押す、という方法はいかにもスペイン語らしいですね。

  因みに、雄の山羊は何というかご存じですか?そう、《cabrón》です。こちらもスペイン語では大変『良くない言葉(隠語)』として頻繁に使用されるのは周知の通りですが、慣用句ではないので、ここでは紹介しません。ところで、《chiva》という言葉をご存じでしょうか?あまり耳慣れない言葉ですが、実は、《cabra》と《cabrón》との間に生まれたメスの赤ん坊をこう呼びます。さて、そこで、次の慣用句に進みましょう。

2. 『estar como una chiva』

  1の慣用句とさほどの違いは見受けられません。《cabra》が《chiva》に置き換えられているだけです。つまり、お母さん山羊から赤ちゃんメス山羊に置き換えられたのがこの慣用句です。ということは、意味も可愛くなって『すこしだけ頭のおかしい』となるのでしょうか?ところが、それがそうはいかないのです。意味は、なんと、逆に《cabra》の場合よりも悪い意味になり、『頭が完全におかしい・完全にいかれている』と、意味を増幅して使用されます。

  尚、1の慣用句『estar como una cabra』で、対象人物が男性の場合、《cabra》が《cabrón》とはならずに常にそのまま女性形で使用されます。《cabrón》を使うと極めて危険なことになるのでくれぐれも要注意です。ところが、この例2)の場合は、《chivo》でも使用できますので、例文は、男性形でだしてみましょう。

  例) Aunque me digan que estoy como un chivo, me iré a la Luna.
    直訳的訳=(完全に頭がいかれていると言われても、僕は月に行くぞ)
    より日本語らしい訳=(何と言われても、僕は月に行くぞ)

3. 『tener memoria de elefante』

  山羊から像へと急に変化しますが、この意味は何だか判りそうですよね。《elefante》ほどの記憶を持っていると便利だろうな、と思われませんか。そうです。これはそのものずばりで、『大変記憶の良い』という意味になります。もっとも、あまり大きすぎると回転も遅く、リアクションも遅くなるとは思うのですが...。しかし、ここでは記憶能力の許容量を問題にしていて、記憶したものを外に出してくる速度を問題にしているわけではないのです。つまり、コンピュータのCPUの大きさとスピードではなく、メモリー自体の容量が多きのが良いという話です。尚、動詞《tener》を使用しなくても同じような意味が出せますので、後者の例文を上げてみましょう。

  例) Ella es como un ordenador; su memoria de elefante es capaz de almacenar hasta 100.000 nombres de toda la ciudad.(ちょっと大袈裟な文章になりました?)
    (彼女はまるでコンピュータだ。その素晴らしい記憶力は、10万人分の住民の名前を覚えることができるのです)

4. 『hacer el mico』

  《mico》という動物はご存じですか?尾長猿のことです。但し、動物学的に果たしてこの呼び名が正しいか否かは少々自身がありません。尾長猿というのは、長いしっぽで常に枝にぶら下がったりしている、なかなか滑稽な動物だという印象があります。そうです。《dejar hecho un mico》とか《quedarse hecho un mico》といった構文を使用し、『物笑いの種にする(なる)・バカをする・おどける』というような意味になります。

  例) No hagas el mico que te están mirando todo el mundo.
    (みんなが見てるんだからバカなまねをするのはおよしよ)

5. 『atar los perros con longaniza(s)』

  動物と言えば、やはり犬を忘れることはできません。しかし、それにしてもこの慣用句は何を言いたいのでしょう?その真意を計り知れない場合は、無駄のように見えますが、必ず基本に戻り、直訳してみましょう。まず、《longaniza》は、細長〜〜〜い腸詰めソーセージのことです。したがって、『犬を細長いソーセージでつなぐ』ということになるのですが、そんなことをすればすぐにその犬自身にソーセージを食べられてしまい、逃げられるのが落ちでしょうから、意味としては、無意味なことをする、といったようなことを言いたいのでしょうか?いや、それがそうではないのです(だったら、直訳する必要なんかないジャン。まあまあそういわずに)。これは、我々日本語人の頭にはまったく想像を絶するのですが、『強大な富を持つ・富を欲しいがままにする』という意味なのです。《longaniza》で犬をつないでおいても、ソーセージくらいならいくら食べられようが、お金持ちだから問題なし、とでも言うのでしょうか?あるいは、《longaniza》を食べられ、犬に逃げられても次の犬はいつでも買える。それとも、犬も逃げたくないくらいに金持ち、と言うようなところから来ているのでしょうか?ネイティブの方で、その真意・由来をご存じの方がおいででしたら是非教えて下さい。尚、この慣用句を使用する裏には、多くの場合、皮肉が込められています。

  例) Emigró a aquel país creyendo que allí ataban los perros con longanizas.
    (あそこには金の成る木でも生えているとでも思ったのか、彼は彼の国に移住した)

6. 『estar hecho unos zorros』

  狐という動物は、古今東西、「悪賢い・抜け目のない」動物と考えられがちな動物で、日本に至っては、人を騙したり化けたりまでする動物として扱われていますが、個人的には、結構可愛いと思っています。犬のようでもあり猫のようでもありで、つまり、人間と最も親しい両方の動物を一つにしたような動物に思えるのですが、まったくの主観でしょうかね?余談はさておき、この慣用句の意味は『疲れはてた・(疲れて)ぐったりした』と言う意味を持っています。狐のイメージからはちょっと想像もつかないのですが、それもそのはず、《zorro》ではなく、複数形の《zorros》になっているところがこの慣用句のみそです。つまり、この《zorros》は狐のことではなく、『はたき』のことなのです。そう、家で埃をはたくときに使う(最近は掃除機があるのであまり使いませんがね)はたきです。それなら、動物のコーナーに入れるな、とお叱りを受けそうですが、辞書では、《zorro》という単語は、あくまでも、一つしかなく、複数形になって意味が変化するわけで、やはり、動物のコーナーに入れるしかなく、動物であって動物でないものが登場したところで、今号はこの辺で。例文は、実にスペイン語的な文章ですので、これも見て下さいね。尚、訳は《zorros》の部分を前に持ってきて、はたきの感じが出るように訳してみました。

  例) Llegó agotada y hecha unos zorros.
    (彼女は枝垂れぐったりとしてやって来た。)

  今回はここまでです。読者諸氏からのご質問・ご意見をお待ちしております。 (文責:ancla)

  以上は、本塾のメールマガジン『e-yakuニュースNo.19(2002年5月末発行)』に掲載されたものです

 

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