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スペイン語文法 番外編 (第一編)

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Monólogo de un pasota == Serie III -17- ==
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第三編 『スペインの慣用句』 (その十七)

    前号では、動詞がキーワードだといいつつも『vuelta』が絡んだ慣用句を3つご紹介してしまったので、そのお詫びというわけではないが、今回はまったく異なった動詞3点の慣用句をご紹介しよう

1. 『ir tirando』
《ir tirando》?何を?「いったい何を捨てながら行く」わけ?っで、どこへ?...などと考えるのは当然のことだろう。久しぶりに慣用句らしい慣用句が出てきたようだ。つまり、これは、どう考えても何故そのような意味になるのか理解不能という慣用句である。何も捨てもしなければ投げもしない。?いや、投げはしなくても投げやりの感じならあるかもしれない。つまり、『何とかやっている』という意味だからだ。これはもう例文を見ていただくしかない。因みに、関西の方ならこの慣用句の持つ意味を十分に理解できるだろう

    例) ¿Cómo te va? Bueno, voy tirando.
        (もうかりまっか? いや、ぼちぼちでんなあ)

2. 『no tener dónde caerse muerto』
    これは尋常ではない。《caerse muerto》は「死ぬ」だから、「死に場所を持たない」というのは、これ如何に。ひょっとしたら、「死なない」ということなのだろうか?それなら結構なのだが、そうでもなさそうだ。だいたいラテン系の人々は大袈裟でいけない。極論というべきか拡大解釈と言うべきか、ありそうにもない大袈裟な表現をすることによって強調の意味込める傾向にある。これを考慮に入れると、訳としては、「死に場所を持たない」というよりも、「死ぬところもない」ということにはならないだろうか?いずれにしても何ともまあ淋しい話だ。今の世の中すべて金次第だ。経済的に豊かでなければ死んでもお墓にも入れてもらえないご時世だということだ。もっとも、「お墓に入ることにいったいどれほどの意味があるのか」という議論は別にしての話だが。そんなことから、この慣用句は『(経済的に)非常な貧困状態にある』ことを意味している。日本語の慣用句で最も大袈裟な表現だと思われるのは『火の車』くらいで、通常は『顎が干上がる・食うや食わず・首が回らない・懐が寒い』程度だ。しかしこれに対し、スペイン語で貧乏であることを表現しようとすると、「死に場所を持たない」と言うことになる

    例) ¿Por qué no contamos con Juan? ¿Qué Juan? ¿Ese? Ese tipo no tiene dónde caerse muerto.
        (ホアンを呼ぼうよ。どのホアン?あいつか?あいつはおけらだぜ)

3. 『saber de qué pie cojea (saber de qué cojea)』
    最近は差別用語というのが日本のみならずスペインでも考慮されていて、実際この慣用句を現在も日常会話で使用しているのだろうか?という心配はない。慣用句は慣用句であって、差別用語として使用しているわけではないので大丈夫だろう。差別用語だからといって慣用句も使用できなくなる社会というのは考えたくない。え?何が差別用語かって?この場合は《cojear》という動詞の「びっこ」なら良いのかもしれないが、もう一つの表現はきっと差別用語ではないだろうか?小生としては余りこの点を気にはしたくない。もっとも、あらゆる言葉を差別の意味を込めて使用するなら、これは良くない

    さて、慣用句に戻るが、「どちらの足を引きずっているかを知る」といわれても、見れば分かるだろう、と言いたくなる。わざわざこの慣用句が持つ意味を表現するために《cojear》を使用する、というのは、まさに『picaresca小説』を生んだスペインならではかもしれない。その意味は、『(誰かが)何を意図しているのか、何を考えているのか、どのような態度でいるのか、を知る』ということである

    例) Lo conozco desde hace años por lo que sé de qué pie cojea.
        (彼のことはもうずいぶん前から知ってるから、何を考えているかは分かってるよ)

    今回はこの辺で終わりにしよう。次回も引き続き動詞をキーワードにした慣用句をみてみることにしよう。ご質問やご意見をお待ちしている。(文責:ancla)

    以上は、本塾のメールマガジン『e-yakuニュースNo.36号(2003年10月末発行)』に掲載されたものです

 

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