Establecida en 2010

Escrito por Tomoko Ikeda del ITT

Sr. Japón y Hasekura san

Japón さんと支倉さん

〜 日本とスペイン400年の時と海を超えた出会い 〜

Fundado en 1995

スペイン語翻訳通訳

Instituto de Traducciones de Tokio

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「ハポン姓の顔 −日本人の痕跡 その2−」
− Episodio XII −


フランシスカさん一家やビルヒニオさん、そして町で出会ったハポンさん達にインタビューをしていく中で、彼らの考える日本人の痕跡として共通に挙がったものがもう一つある
「顔」である
ハポン姓を持つ人々の顔はどこか東洋的で、目が細く、顔の彫りが浅い。また、髪も黒い。アンダルシア地方は、モーロ人の血を引いている人が多いのでもともと金髪は少ないが、モーロ系に共通した毛深い人が、ハポン姓の人の中には見当たらないという(『ヨーロッパに消えたサムライたち』、太田尚樹著、241頁参照)

フランシスカさんの息子フアンさんは、幼い頃は今よりもっと目が細く、より日本人に近い顔をしていたという。また、ビルヒニオさんと数人のハポンさんが何年か前に仙台市を訪れた際、日本人女性の中に自分の姉、妹とそっくりの顔の人を見つけたと証言している。この証言に関しては、「本当に?!」とつっこみたくなってしまうが、そう言われれば、確かに日本人の面影を残していると言えなくはない。しかし、私たち日本人の目からするとまったく普通のスペイン人と変わらないのではないかというのが正直な感想である。だが、スペイン人や他の国の人から見ると、ハポン姓を持つ人々の顔はやはり、普通のスペイン人とは違うらしい。というのも、私がセビリアのバス停でコリア・デル・リオ行きのバスを待っていた際に、セビリア在住のボリビア人と出会ったのだが、彼もまた、コリアへ行くバスを待っていたので、ハポン姓を知っているか聞いてみた時のことである
彼は、その存在だけは知っているようだった。そこで、ハポンさん達の写真を見せると、「これは本当にスペイン人か?」と驚いていた。彼はボリビア出身だが、長いことスペインに住んでいる。そのため、通常のスペイン人の顔はよく知っているとみていいだろう。彼に言わせると、ハポンさん達はスペイン人の顔には見えないという。帰国後に、当時私が在籍していた大学のスペイン人講師何人かに聞いてみると、彼らもまた、ハポン姓の人たちの顔は違うと言っていた

日本においても、例えば沖縄県出身の人の「顔」と本州の人のそれとはどこか違っている。もっとも、「沖縄出身です」と言われれば、「ああ、確かに」と思うこともあるけれど、その違いは外国人にも判別可能なほどの大きな違いはない。ハポン姓を持つ人々の「顔」についても同じことがいえるのではないかと考える

さて、フランシスカさん一家へのインタビューが終わり、3杯目のCervezaのグラスも空になった頃、そろそろお暇しようとすると、フランシスカさんが「あなたにプレゼントがあるの」と言って、扇子を一つ渡してくれた。その扇子を広げると、アンダルシアの空を思わせるような濃いブルーの下地に、黄色のひまわりが描かれていた。フランシスカさんが以前日本人からもらった無地の扇子に自分で色を塗り、絵を描いたのだという
「よく見て。ここに私のサインが入っているから。ほら、Francisca Japónって。帰国したら、日本人にこれを見せるといいわ。これが私たちが日本人の血を引いているっていう何よりの証拠になるから」

彼女は茶目っけたっぷりにそう言い、ウインクした

日本人が持ってきた日本の扇子に、ハポンさんが絵を描き、そして日本人である私の手元に渡ったことは、まるで、遠い昔に日本人がこの地で何かを伝えて、それが受け継がれ、ハポン姓として再び私たちに伝えられたことと重なる気がして、何だか嬉しかった

「そうかもしれないね」

私は笑顔でそう答えた