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スペイン語文法 番外編 (第一編)

馬耳東風 (第二編) スペインの慣用句 (第三編) マヤ暦のページ


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Monólogo de un pasota == Serie III -02 ==
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第三編 『スペインの慣用句』 (その二)

    前回の慣用句は、日本人の感覚からは少々ありそうにないような慣用句を4つばかりご紹介しました。慣用句には、こうした『ありそうにもない(Inverosimil)』なものや、『ありそう(Verosimil)』だけれど...といったものや、聞けばなるほどとは思っても、ちょっと『想像がつかないもの(Inimaginable)』、結構日本人の感覚でも判ってしまう『想像可能な(Imaginable)』もの、そして、万人に判る『そのまま(tal cual)』のものなど、いろいろあります。また、単語を基準にすれば、人間の体の部分を遣って表現するものが結構存在し、また、家具・動物・自然等々も相対的に多いと言えるでしょう。つまり、基本が口語体だけに生活に密着した単語を使うのが基本なのでしょう。無論例外もありますが

    尚、初回にお断りをしておくべきだったのですが、このメールマガジンは、初心者から言語学の教授に至るまで様々なレベルの方が購読されています。したがいまして、ここでご紹介する慣用句のレベルは万人向けと言うことになりますので、レベルの高い方にとってはほとんどが知っているというような結果になるかもしれませんが、ご了承下さい

    さて、では今回は、まず、体の部分が出てくる慣用句の特集といきましょう。この種の慣用句は前述のように山のようにあるので、今後も引き続き出てくると思います

1. 『de boca en boca』、あるいは、『en boca de todos』

    この慣用句には、通常、『andar』、『correr』、または『rodar』などの動詞が伴います。意味はすべて同じようなものです。この表現なら我々日本人にも想像できますよね。そう、その通り『口から口へと』とか『口伝えで』といった意味です

    例) A la muerte del Cid, su fama corría de boca en boca añadiendo datos fabulosos a los datos reales.
        (エル・シドが死に、彼の名声は口から口へと事実に尾ひれが加えられ伝わっていった)

2. 『con el culo al aire』

    慣用句には、上記1の例のように、日本語訳がほとんどの状況でも変化しないものよりも、むしろこの慣用句のように、状況によって様々な日本語訳が想定されるものがあります。意味は『頭隠して尻隠さず』ではなく、直訳すれば『お尻丸出しで』ということになり少々赤面するような状況が浮かび上がってくるのですが、無論、『文字通り【(al pie de la letra)これも慣用句の一つです】』の状況だってないことはないでしょうから、その場合は慣用句としては扱えません。しかし、慣用句として使用される場合は、意味と言うよりもその使用される場面の状況がものを言います。つまり、『無防備』状態の時、『お手上げの状況に置かれた』場合や、『突然何かが起こりあわてふためいている』状態の時でしょう。尚、慣用句として使用する場合、動詞『quedarse / encontrarse / estar』等が多々使用されることも併せて覚えて下さい。と、言いながら、例には違う動詞を出すのですが...

    例) Mi mujer se marchó con todo el dinero que tenía y me dejó con el culo al aire.
        (かみさんが全財産を持って出ていってしまいましてね、僕、どうしようもないんです)

3. 『chuparse el dedo』

    赤ん坊が指をくわえている情景が浮かぶでしょうか?そう、その通りです。『指をしゃぶる』という訳になります。ところが、このスペイン語の慣用句を訳した場合、必ずしもそうなるとは限りません。立派な大人が指をしゃぶっている情景を想像してみて下さい。それではその人がまるで馬鹿に見えませんか?そうなのです。意味としては『ばか(無邪気)である』となり、『mamarse el dedo』としても同じ意味での使用が可能です。尚、日本語では、何か物欲しげなときに『指をくわえている』と言います。例えば、「私は幼い頃近所の子達が遊んでいるのをよく指をくわえてみていた」などと。しかし、これをスペイン語に訳すときに、Solía chuparme el dedo mientras miraba a los vecinos jugando.とすれば、自分は単なるバカだったといっているだけであって、日本語の真意が汲まれいません。確かに、見ているだけでなく、羨ましいと思わずに一緒に遊べばよかったわけで、それをしなかったのはバカなのかもしれないのですが、この日本語文が言いたいのはそんなことではありません。私は別段バカではないのだけれど、(性格が)内気で、一緒に遊びたかった。仲間に入れなかった。あるいは、何らかの理由で仲間に入れてもらえなかったのであって、けっして、この主人公がバカだとはこの日本語文からは読みとることはできません。では、この場面では絶対にこのスペイン語の表現を遣うことができないのかと言えばそうでもありません。つまり、慣用句としての表現を解除すればいいわけです。例えば、Solía chuparme el dedo como señal de rabia y deseo mientras miraba a los vecinos jugando.という風に、何故指をくわえていたかの理由を述べればその時点で慣用句ではなくなるわけです

    例) ¡¿Es que tú piensas que yo soy uno de esos que se chupan el dedo?!
        (お前は俺のことをその辺の阿呆だと思っているんだな?!)

4. 『morderse los labios』

    通常スペイン語というのは、複数や男性女性が明確にされていることなどで実に合理的な言語なのですが、中にはこういった不合理な表現も存在するのです。唇は上と下の両方を合わせて唇というわけで、だからこそ複数形で正しいのですが、この『唇を噛む』という表現になると訳が分からなくなります。それとも、hispanoparlantesは両方の唇を一度に噛むことができるのでしょうか?などとバカな冗談はさておき、これも例3同様かなり状況を想像することができる慣用句の一つです。我々日本人だって『何かを言いたいのを我慢』したり、『笑いたいのを我慢』したりするときはありますよね。日本語の慣用句の『臍を噛む』に似た状況はあるのですが、この場合は『悔しい』という感情に支配されているわけで、『morderse los labios』は必ずしもそのような極端な状況でなくても使用可能です。『morderse la lengua』も同じ意味で使用します

    例) Deberías haberte mordido los labios y no haberle contado toda esa historia.
        (いらぬことをベラベラ喋らずに黙っているべきだったんだよ君は)

5. 『ensuciarse las manos』

    『(自らの)手を汚す』というのがそのままの訳であって、しかも、日本語の慣用句である『手を汚す』にとてもよく似ています。但し、両言語で大きな違いがあるのは、日本語の方は、『(何か良くない、あるいは、つまらないことをしたことで)手を汚してしまったよ』などと、スペイン語で言うところの『悪事に手を出す』とか『法を犯す』という意味ではありません。つまり、スペイン語の『手を汚す』は、あくまでも『法的に良くないこと』が前提になります。もっとも、日本語には『手を染める』という慣用句が存在します。こちらの方がよりスペイン語の意味に近いかもしれませんが、『手を染める』という表現自体にはこちらも悪意は内在していませんから、次の例文のような使い方になるでしょう

    例) Conmigo no contéis que yo no pienso ensuciarme las manos.
        (君たち僕は悪事に手を染める気はないからな)

6. 『comer con los ojos』

    日本料理はまさにこの通りだとばかりに、スペイン語人に『Debes de comer con los ojos la comida japonesa』などとは言わないようにしましょう。無論状況が違いますから理解してもらえるとは思いますが...。この慣用句は、ちょっと難しい動詞を使用して『devorar con los ojos』とも言うのをみても判るように、あまり良い意味・表現ではありません。日本語でも、美しいご婦人を見ると男たちが言いませんか?『おいしそう』などと。そう、ここまで言えばもうその意味・状況はつかんでいただけたでしょう。『(物欲しげに)見る』とか『(ほれぼれと)ながめる』、あるいは、もっと分かり易く言えば『(あの女・男を)食べてしまいたい(とsexしたい)』ということなのです

    例) ¿Sabías que en la fiesta de anoche ella te estaba comiendo con los ojos?
        (昨夜のパーティーで彼女が君のことを物欲しそうにじっと見つめていたことに気づいていたかい?)

7.  『hablar por los codos』

    肘によって話すというのではまったく意味を介さない。口だけではなく肘ででも話す、?とまで訳出してくると若干判らぬこともない。と言うわけで、『良く喋る・喋りまくる・どんどん喋る』の意味になる。この表現は大変一般的なので知っている人は多いと思うのでこれ以上のコメントは避けることにする

    例) En Honolulú de Hawai se habla japonés hasta por los codos.
        (ハワイのホノルルでは日本語がいやと言うほど話されている)

    さて、できるだけ分かり易く説明しようという意図からなのですが(エッ?性格がしつこいからだ?)、どうも解説が長くなってしまい、なかなか数がこなせませんがご理解下さい。読者諸氏からのご質問・ご意見をお待ちしております。 (文責:ancla)


    以上は、本塾のメールマガジン『e-yakuニュースNo.17(2002年3月末発行)』に掲載されたものです

 

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