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Monólogo de un pasota == Serie III -05 ==
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第三編 『スペインの慣用句』 (その五)
さあ、今号も動物シリーズでいってみましょう。とはいうものの、これが意外に少ないのです。無論、ないことはないのですが、ポピュラーな動物(象・ライオン等々)の名前が入った、有名かつ面白いものがあまりないのですが、ともあれ始めてみましょう。一応、整理するためにABC順に並べていきます。
1. 『a mata caballo』
まずは馬に登場してもらいましょう。スペインでは犬猫や牛と並んで重要な地位を占めている馬ですが、慣用句ではあまり良いのが思いつきません。ここに挙げたものも、その意味はすぐに分かってしまいそうな慣用句です。「馬を殺してしまうほど」なわけですから、激しく走らせれば死に至らせてしまいます。したがって「全速力で走る」という意味かな?と考えると、まあ、遠からずといったところでしょうか。慣用句の意味としては、『〜
あわてふためいて』、『大急ぎで』ということになります。尚、『a
matacaballo』と名詞形にして使用する方が一般的なようですので、例文もこれを使用します。
例) Fuimos al cine a matacaballo y nos quedamos sin ver el principio.
(取る物も取り敢えず映画に出掛けたものの、最初の部分は見られず仕舞いだった)
2.
次はペットの女王とも言うべき猫に登場してもらいますが、これはさすがに多い。そこで、以下に一挙にまとめてみました。
2-01『como el gato y el perro』
直訳では、「猫と犬のように」となります。何か思い当たりませんか?そうなんです。所変われば品変わる...の代表のようなものですね。もっとも、日本でも猫と犬は決して仲良しではないと思うのですが、日本では、『犬猿の仲』と言います。例文など必要ないくらいの慣用句ですが...。
例) Esos vecinos se pasan el día como el gato y el perro.
(あそこのお隣さん、一日中お互いに喧嘩ばかりして過ごしているんだ)
2-02『dar gato por liebre』
日本では羊の頭を看板に掲げて実際には犬の肉を売るという意味から『羊頭をかかげて狗肉を売る』あるいは、四字熟語として『羊頭狗肉』というが、どうやらスペインでは「ウサギの肉だと騙して猫の肉を売る」らしい、というところから、『見かけ倒し』だとか『騙す』という意味で使用されます。
例) Autenticidad y rareza; estas son las condiciones mínimas que exijo
para que algo ingrese en mi colección. Nadie me da gato por liebre.
(真実性と希少性、小生のコレクションに加えるにあたって最低限付ける条件がこれだ。誰も小生を騙しはできん)
2-03『lavarse como los gatos』
これは分かるような気がしませんか?だいたい猫が顔を両手(両前足?)でしっかりと洗っている所など見たことはありません。片手?を使って念入りに洗うという話もあります(猫を飼ったことがないので...)が、果たしてあの格好は顔を洗って(舐めて)いるのか否かは、猫に訊いてみなければ...。さて、冗談はさておき、水嫌いの猫が身体を洗ったとすれば、きっと、日本語で言うところの『カラスの行水』なのでしょうね。つまり、何かを急いでいい加減に洗うことをこう表現します。
例) Mi mujer lava a su perro a fondo en el baño a diferencia de lavarse
como los gatos.
(妻はお犬ちゃんを風呂場でしっかりと洗うのですが、彼女自身はカラスの行水です)
2-04『llevarse el gato al agua』
猫は水が嫌いですから、その猫を水のあるところまでつれて行くというのは、まったくもって至難の業なのでしょう(前述のように小生は猫を飼ったことがないのでよく分かりませんが...)。ということで、『大成功を納める』とか、『熾烈な競争を勝ち抜く』、あるいは、『自分の意志を貫き通す』というような時に使用される慣用句です。
例) La Selección japonesa no pudo llevarse el gato al agua en los
mundiales.
(日本選抜チームはワールドカップで勝ち抜けなかった)
この例文を作ったのは、日本が「どこかのチーム」と戦って引き分けた翌々日だったので、僕は非国民かな?
2-05『buscar tres pies al gato』
この慣用句は、猫を使った慣用句の中でも最もポピュラーなものの一つでしょう。本来四つ足ならどんな動物だって良いはずなのですが、何故か猫なのかは、やはりそれだけ人との馴染みが深いからでしょうか?それだったら、犬好きの人は《buscar
tres pies al perro》と言いたいでしょう。因みに、身体障害の3本足の猫ならいるかも知れないので、この《tres
pies》の部分を《cinco pies》と言い換えることもあります。これなら絶対にいないだろうからです。したがって、意味としては、『(物事を)ことさら難しく考える』とか、『無理な要求をする』とか、『無駄な努力をする』といった時に使用されます。
例) Si te dijo que sí, no le busques tres pies al gato y déjate de
pensar tonterías.
(OKって言ってくれたんなら、それで良いじゃないか。もうそれ以上ああでもないこうでもないと考えるのは寄せよ)
2-06『no hay ni un gato』
スペインはウサギの国のはずなのに、どうやら、猫がいない場所なんて言うのは非常に珍しいらしい。『〜人っ子一人いない』とか、『誰もいない』というのをこう表現するのです。これも非常にポピュラーな慣用句の一つです。
例) Allí, cuando llegué yo, no había ni un gato.
(あそこに着いたとき、人っ子一人いなかった)
3. 『tener monos en la cara』
日本では、「猿も木から落ちる」とか、「猿の尻笑い」とか、猿は結構人に近しい存在ですが、スペインではあまりそうではないようで、猿を含めた慣用句というのはさほどありません。その中でもっともその使用頻度が多いだろうと思われるのがこれです。「顔に猿を持つ」???要するにお猿さんのような面白い顔をした人を罵倒するときにでも使うのでしょうか?いえ、そうではなく、『あまりジロジロと人の顔を見るな』ということなのです。使用方法としては、いわゆる、「強面のお兄さん」が顔を見られて因縁をつけるときのように、疑問文で用いられることが多いようです。
例) ¿Y qué te pasa a ti, que no me quitas ojo? ¿Es que
tengo monos en la cara o qué?
(オーオー、俺の顔をじっと見やがって、この野郎、俺の顔に何か付いてでもいるって言うのかよー)
4. 『por si las moscas』
あの夏になったらしつこく飛び回るハエも我々同様に動物だというのはどうも納得がいかないのですが、ハエ人間なんていう映画もあることですし、ハエも人間もそう変わりはないのでしょうね。ということで、この動物シリーズにもハエに登場してもらいましょう。意味は『万が一』ということです。何故ハエなのか?何故「もしハエだったときのために」が、『万が一』という意味になるのか?これはナゾです。小生はその理由を知りません。どなたかご存じの方はおいででないでしょうか?
例) Aunque hace sol, llévate el paraguas por si las moscas.
(お天道様は出てはいるが、万が一のために傘を持ってお行きよ)
5. 『vender la piel del oso antes de cazarlo』
動物シリーズはあまりないと言いながら、こうして書いていくと結構あるものですね。まあ、それでも、全体から見ると少数派に属するのでしょう。ともあれ、この最後のは、いずれかというと慣用句というよりも諺に近いものでしょうか。直訳してみると、「熊を捕まえる前にその皮を売る」ということになります。あれれ?どこかで聞いたような文句ですね。その通り、日本では熊の代わりに狸が使われ、『捕らぬ狸の皮算用』と言ったりします。つまり、「希望的観測に基づく将来設計を性急にしてしまう」とき等に使用します。日本人は奥ゆかしい?ので、皮算用だけで済んでいるのですが、スペインでは手にしてもいないものを売ってしまうのでしょうか?まるで先物取引ですね。
例) Parece que nuestro padre vendió la piel del oso antes de cazarlo ya
que llegó la factura de un ataúd.
(親父のヤツどうやら事を急いたようだな、棺桶の請求書が届いたぜ)
今回はここで一応最後にしますが、次号も続けて動物シリーズを一挙公開と言うことにしましょう。では、読者諸氏からのご質問・ご意見をお待ちしております。
(文責:ancla)
以上は、本塾のメールマガジン『e-yakuニュースNo.20(2002年6月末発行)』に掲載されたものです |
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