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Monólogo de un pasota == Serie III -34 ==
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第三編 『スペインの慣用句』 (その三十四)
さて、今回も身体の一部をキーワードにした慣用句で責めてみようか
1. 『ponérsele en el moño』
《moño》と言うのは「束ね巻きにして後頭部の上の方に置かれる髪」のことで、最近では女性の特許ではなくなっていて、いわゆる「髷(まげ)」なる立派な言葉があるのだが、おそらく、侍や相撲取りの髷とは一線を画す表現が欲しかったのだろう、フランス語の「シニョン」が外来語として使用されるようだ。直訳すると「(誰かの)髷に(何かを)置く」となり、何を言いたいのかが明確に伝わってこないので、例文を見ていただくことにしよう
例) Se le ha puesto en el moño salir de excursión aunque haga mal
tiempo.
(たとえ天気が悪くなっても遠足に出かけたいらしい)
お分かりになっていただけただろうか?要するに、『誰かさんの頭に何かをしたいという気が無性に起こる』時などに使用されるわけで、これという訳語を付けることはできないが、強いて言えば、日本語の慣用句である『食指が動く』に近いと言えよう
2. 『cerrar los ojos』
直訳だと「瞳をとじる」となるが、決して歌謡曲の題名ではない。「目を閉じる」であるとか「眠りに落ちる」ではあまりにも当たり前すぎて慣用句扱いにはならないし、前置詞の《a》を伴わせ《cerrar
los ojos a la verdad》でも、単に「目をつぶる・見て見ぬふりをする・真実を見ようとしない」であり、《No
he cerrado los ojos, toda la noche》では「一晩中眠らなかった」なので、若干慣用句的な感じがするが、慣用句としての意味は『死ぬ』である。また、いわゆる「〜に目をふさぐ」。つまり「見て見ぬ振りをする」や「知っているのに黙っている」の意味でも使用される
例) El día que yo cierre los ojos, ya os apañaréis como podáis.
(俺が死んだ後は、お前たち、お前たちなりに何とか頑張るんだな)
ちょっと寂しい慣用句になってしまった
3. 『hacer oreja』
またしても直訳からの導入になってしまうが、「耳をする」・「耳を作る」だと、これまたなにが言いたいのか分からない。無論だからこそ慣用句なのだ。日本語の慣用句も耳をテーマにしたものは多いので、このスペイン語の慣用句を、日本のそれに置き換えれば、『聞き耳を立てる』や『耳を傾ける』となる。これらは違う意味にもとれるが、その実、根底に流れているものは同じだ。つまり、「一所懸命に聞く」ことには違いがないからだ。つまり、前者は悪い意味、後者は良い意味で「一所懸命聞く」わけだ
例) Hablemos fuera, que no se sabe si hay gente haciendo oreja.
(壁に耳あり障子に目ありだ。外で話そう)
さて、今回はこの辺りで終わることにしよう。ご質問・ご意見をお待ちしている。(文責:ancla)
以上は、本塾のメールマガジン『e-yakuニュースNo.59号(2005年10月末発行)』に掲載されたものです |
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