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Monólogo de un pasota == Serie III -37 ==
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第三編 『スペインの慣用句』 (その三十七)
今年も引き続き身体の部品名をキーワードにした慣用句を続けることにしてみよう。しかし、今回は十分に覚悟して読んで頂こうと思う。ご紹介する身体の一部は「mano」のみで、しかも動詞も「meter」のみである。しかし、いつも通り3種類の慣用句としてご紹介するからだ
1. 『meter mano (meter la mano, las manos)(a)(en)』
まず最も基本的なこれからいこう。この表現に対する日本語訳は、通常、「〜に手を出す」、「介入する」「〜に手をつける・始める」、あるいは「触る・殴る」等と辞書では出ているようだ。しかし、用例が無くてはかなり理解しづらい。そこで、今回は例文を見て頂きながら話を進めていこう
例-1) Hay que meterle mano a este asunto antes de que sea tarde.
(手遅れにならない内にこの問題にけりを付けなければ)
「けりを付ける」という訳を付けたが、これもやはり「〜に手を出す・手をつける」等の意味である。「手遅れに・・・」の表現を受けて「けりを付ける」、つまり、唯単に「手をつける」だけではなく、早く解決をしないと手遅れになると言っているのだから、「けりを付ける」といった最終段階までの「手をつける」を表現したわけだ
例-2) Dicen que la Policía está metiendo mano a los que deben multas
de tráfico.
(警察は交通違反で罰金をためている奴らを摘発しているらしい)
ここでは辞書には絶対に出てきそうにない「摘発する」という訳を付けた。状況からしてこの訳が適訳であろうことは読者諸氏にも納得していただけると思う。つまり、警察が罰金を支払わない連中に対して、滞っている罰金の支払いをさせるために「手を付ける」わけなので、あくまでも、「不正は摘発」しなければならないのでこの日本語訳になるというわけだ
例-3) ¿Quién ha metido mano en mi cajón?
(誰だ?!僕の引き出しを引っかき回したのは?)
これもまた同じように「手を付ける」なのだが、他人の引き出しに「手を付け」それに対してその持ち主は非難しているわけなので、これはもう単に「触った・手を付けた」では済まないことをしたに違いない。つまり、引き出しをこじ開け、中のものを盗んだ可能性もあるわけである。むろん、中のものを盗むのに、必ずしも「引っかき回す」必要は無いかも知れないが、この表現によって、「盗み」の可能性も示唆する表現になっている。実際のところ、スペイン語のこの慣用句は、「他人のものを我がものにする」意味が含まれている
例-4-a) En el metro me metieron mano.
(地下鉄の中で痴漢にあったのよ)
例-4-b) En el metro le metieron mano a esa chica.
(あの娘は地下鉄の中で痴漢にあったのよ)
これは前置詞「a」を付け、つまり、直接補語をとる人称代名詞を伴う形での用法で、これを明確にするために、第三人称での表現も合わせて提示してみた。この表現は上述の「〜(人)を触る」になるのだが、同じように「触る・触られる」であったとしても、必ず痴漢的要素を持って触る場合に限るので要注意。つまり、愛する夫が「妻を触る」は決して「meter
mano a」にはならず、この場合は、あくまでも「acariciar」等と表現せねばならないので重々お気を付け頂きたい
例-5) Desde que el Ayuntamiento metió las manos en el asunto, este ha
empeorado.
(市役所がこの問題に首を突っ込んで来てからと言うもの、この問題は空回りしている)
最後にご紹介するのは、前置詞「en」を伴う用法の例である。つまり、ここでは、前述の辞書によく出ている表現の「介入する」に相当しよう。つまり「〜の中に介入する」ということになる。そこで、日本語では、「手を付ける」のはあくまでも外部から外部の部分に「触れる」場合に「手を付ける」と表現するが、この様な場合、つまり、外部から内部にまで「入り込んでくる=meterそのもの」場合には、日本語だと、やはり、この「首を突っ込んでくる」方がより自然な表現だと思う。スペイン語の「手」が日本語では「首」に化けるわけだ
さて、今日のとことはこの辺りで終わりにしよう。ご質問・ご意見をお待ちしている。(文責:ancla)
以上は、本塾のメールマガジン『e-yakuニュースNo.64号(2006年02月末発行)』に掲載されたものです |
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