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第23回リサイタルに寄せて |
濱田 滋郎 (音楽評論家・スペイン文化研究家) |
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歌の「いのち」を知る人、谷めぐみ |
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グラナドスほかの「芸術歌曲」から、「ラ・ビオレテーラ」などの「懐メロ流行歌」に至るまで、それぞれに魅力的なスペインの歌たち。今年もまた、それらに歌としての「いのち」を吹き込む術を心得た人、掛替えのないスペシャリスト、谷めぐみのリサイタルを味わえる。題して「スペイン浪漫」、スペイン語で言うとすれば「エスパーニャ・ロマンティカ」となるだろうか。たしかに、スペインの歌には、つねに微妙な「粋(いき)」のスパイスを混ぜ込んだロマンティシズムの甘美さ、優美さが行きわたっている。ただし、スペインのロマンティシズムは、たんに夢のような甘美さに浸るだけのことではない。そこには常に、リアリズムの裏打ちがあり、実人生の悲哀、苦痛、あるいは宿命感といったものが浸み込んでいる。そういった「裏のもの」までも、余さず歌に込め、味わわせてくれる人こそ、歌の「いのち」を知る谷めぐみなのである |
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