さて、今回からは水以外の飲み物をキーワードにした慣用句もみてみることにしよう。水以外の飲み物といっても、すべての飲み物は水が基本になっている。水と言って語弊があれば、いかなる飲み物にも水分があるわけで、この意味でまったく当を得ていないわけではない。
1. 『sacar el jugo』
果物などに含まれる水分・液体を《jugo》と言う。つまり、ジュースや果実が《jugo》であるが、それなら、《zumo》の方がより初級の段階で学習する単語として存在する。では、《jugo
de naranja》が正しいのか?《zumo de
naranja》が正しいのか?と聞かれれば、どちらも正しいと答えるしかない。もっとも、《jugo》の場合は、《Líquido
procedente de la secreción
animal》も《jugo》である。つまり、動物の体内の分泌液もまた《jugo》なのである。しかたがって、《jugo》の方にはいわゆる「汁・液」というニュアンスが入ってくる。したがって、この慣用句は「何かから汁・液を引き出す」ということなので、『〜から汁を搾る・搾り取る』となる。つまり、果物以外のものからも搾り取れるものがあれば搾り取ってしまえ、っというわけだ。したがって、本来「汁」という少し汚れた感じを与えない《zumo》ではこのニュアンスを出せない、と思うとそうでもなく、ちょっと皮肉っぽく、つまり『〜からジュースを搾り取る』とやや表現を優しくすることで逆に皮肉がこもり、よりきつい表現となり、《jugo》の代わりに《zumo》を使用することも可である。
例-1) Ese caradura le está sacando el jugo a la
familia de su esposa.
(あの恥知らず野郎、奥さんの家族を利用していやがる)
例-2) Marta le ha sacado bien el zumo a su proyecto y
ha conseguido que la asciendan.
(マルタはそのプロジェクトを旨く利用して昇進してしまったよ)
2. 『bautizar (o cristianar) el vino』
《bautizar》も《cristianar》もあまり我々日本人にはピンとこない馴染みの薄い動詞である。「〜に洗礼をほどこす・授ける」という意味である。つまり、カトリック教会用語と言えるだろう。西欧の中でもラテン系言語の人たちとカトリック教は切っても切り離せないわけで、《vino》もその式典などには欠かせない飲み物だ。余談になるが、あのミサで使用されているワインは、《vino
de
misa》と呼ばれ、スペインのある地方でのみ生産されている特別なワインで、全世界のカトリック教会でのみ使用されているという極めて特殊なワインであり、一般には市販されていない特上+極上のワインだ。つまり、ローマ教会御用達のワインであって、スペインでのみ生産されていることは以外と知られていない。したがって、《bautizar
el
vino》とは、そうした《vino》に洗礼を授けると言うことになるのだが、では、何故そんな必要があるのだろう?と不思議に思わざるを得ない。スペインなどでのカトリック教というのは、日本の仏教や神道のように、生活の一部に溶け込んでいて、皮肉を込めた逆説的な表現として『水で薄める』という意味になる。
例) Yo creo que los taberneros todavía bautizan el
vino.
(居酒屋は未だに水で酒を薄めていると思うんだ)
3. 『tener alguien buen (mal) vino』
「だれかが良い(悪い)ワインを持つ」というのが直訳だが、そうなると、「え?だからどうなの?」と言いたくなってしまう。まあ、100歩譲って、「それはよござんしたねぇ」とか、「それは残念でした」とくらいしか返答のしようがない。元来、慣用句というのは、前述の(2)のように、非論理的な表現である場合であるとか、この慣用句のように、あまりにも当たり前すぎて素直に受け入れがたい表現である場合が慣用句である。よって、文中にこうしたいずれかの表現が出てきた場合には、是非とも疑ってかかること、そして辞書を調べることが肝心だ。もっとも、スペイン語には慣用句・言い回し等は山のようにあり、すべてが、いや、西和辞典などではほんの一部しか収録し切れていないのでそのつもりで。さて、この慣用句は、したがって、どこをどう捻ったらその意味になるのか理解し難い意味を持っていて、『〜の酒癖が悪い(悪くない)』となる。
例) No dejéis que Manolo siga bebiendo; ya sabéis que
tiene mal vino.
(彼の酒癖が悪いのは知っているだろう。マノロにそれ以上飲ませたらだめだよ)
さて、今回はこの辺で終わりにしよう。ご質問・ご意見をお待ちしている。(文責:ancla)
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短文翻訳 2005年04月末更新分
(511-520)
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01. Si
quieres hablar el castellano tienes que pronunciar la
"c" y la "z" mordiéndote la lengua entre los dientes.
スペインのスペイン語を話したいなら、上下の歯の間に舌を挟んで「C」と「Z」を発音さないとだめだよ
02.
Últimamente ella no llega a la oficina a las nueve, ¿qué
le pasa?
最近、彼女は九時にオフィスに来ないが、彼女に何かあったのかね?
03. Ya no
quiero ir a la clase. Cuando yo hablo, todos se ríen de
mí.
もう、クラスには行きたくない。僕が話すと皆笑うんだ
04. Ahora
le da por estudiar.
今度は勉強に熱中し始めたよ
05. Cuando
se dice "una libra" de carne, me alucino porque no tengo
idea de qué cantidad podrá ser.
「1ポンド」の肉って言われると、頭がくらくらしちゃう。だって、どのぐらいの量なのか見当もつかないんだもの
06. Aunque
el edificio tiene aspecto austero su interior es muy
suntuoso.
外見は地味だが、その建物の中は非常に豪華絢爛だ
07. En el
año 2008 obtendré la licenciatura.
2008年には学士号を取得してやるぞ
08. España
no es un estado federal. Las leyes son para todo el país.
スペインは連邦国家ではない。法はスペイン全土を対象としている
09. Hay
catalanistas empedernidos. Ellos son catalanes antes de
ser españoles.
頑ななカタルーニャ主義者がいる。彼らはスペイン人である前にカタルーニャ人なのである
10. La niña
creció con su abuela ya que fue apartada de sus padres
en un santiamén por culpa de la guerra.
戦争のせいでいきなり両親から引き離されたことで、少女はおばあさんのところで大きくなった