さて、今回も飲み物ではないにしても、水には違いない液体や液体に関連した語をキーワードにした慣用句をみてみることにしよう。
1. 『como llovido del cielo』
「空から降ってきたように」が直訳だが、これだけではやはり慣用句なのでその意味は伝わってこない。そこで、少しこの直訳を変えてみると、「空から降ってきたかの如く」となると意味が通じるというものだ。こうしてみると、訳というものが、如何にその訳語文の言語に左右されるのかが明確に分かる。つまり、問題は訳語言語が持つ意味の範囲を如何に定めるか、より多くの広範にわたる同義語を操れるかによることが分かる。つまり、「降ってわいたように→不意に、突然」といったように広がっていくわけだ。こうなるともうしめたもので、自在にその意味を持つスペイン語も使用可能になると言うわけだ。なお全くの同義で、『como
caído del cielo』も使用されるので併せて覚えてしまえば、それだけ幅広い語彙力がつく。
例) Aquel dinero me vino como llovido del cielo.
(あの金はまったくもう神のお恵みとしか言いようがない金だった)
2. 『ser (algo) la gota que colma el vaso』
《colmar》は〜を一杯にするなので、この場合はコップを一杯にするとなり、「コップを一杯にする水滴です・である」が直訳になる。さてこのこの動詞《colmar》だが、名詞に《colmo》があり、口語体でよく使用される《Esto
ya es el
colmo.》、つまり『これはもう限界だ・もう我慢ならない』等の場面で使用される。つまり、「もう水滴でコップは一杯になったのでこれ以上はもう何も入らない」状態なわけで、それ以上入れると当然のことながら液体はコップから溢れてしまう。「ギリギリの限界」状態をを指していて、決して「溢れだした」状態を示してはいないので、ご注意を。つまり、『堪忍袋の緒を切らせる寸前の状態・その一歩手前の状態』を指している。「堪忍袋の緒を切らせた」後の状態を示すには、《ser
(algo) la gota que rebasa (hacer rebasar) el
vaso》がある。つまり、液体がコップから溢れてしまった後の状況だ。
例-1) Que encima no me hable es la gota que colma
el vaso.
(あげくは口も聞いてくれないなんて、もう我慢ならないよ)
例-2) Aquel comportamiento suyo fue la gota que
me hizo rebasar el vaso.
(彼のあの態度は私の堪忍袋の緒を切った)
3. 『sudar la gota gorda』
直訳をまずしてから説明に入るという実に短絡的な手法でまことに恐縮だが、これが最も論理的な展開をさせやすい方法であって、結果的には理解されやすい方法であると思う。とはいえ、「太った水滴をかく」は変だし、元来、《sudar》は「汗をかく」のであって汗でなくてはならない。よって、せめて「太った水滴の汗をかく」にしてほしい。もっとも、これでも変な日本語だ。したがって、やはり、最低限、いくら直訳だとは言え、「大きな汗をかく」、あるいは、「汗を一杯かく」程度の日本語までを直訳と呼びたいものである。そうでなければ、《hace
rebasar el
vaso》っと言うことになる。つまり、これが直訳であって、慣用句の意味はもっと奥の深いところに潜んでいる。したがって「血のにじむような努力をする」という慣用句の意味に到達するには、もう一歩も二歩も踏み込んでみなければいけないことになる。
例-1) Tuve que sudar la gota gorda para aprobar
aquel examen.
(あの試験に合格するには全身全霊を打ち込まねばなりませんでした)
例-2) Lo conseguí, pero me hicieron sudar la gota
gorda.
(やりましたよ。もっとも、血のにじむような努力を強いられましたがね)
さて、液体シリーズもこの辺で終わりにしようか。来週からはまた別のものをキーワードに、引き続き慣用句をご紹介することにしよう。ご質問・ご意見をお待ちしている。(文責:ancla)
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短文翻訳 2005年05月末更新分
(521-530)
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01. Mi
padre es partidista siempre defiende a los
republicanos.
父は党派に凝り固まった人で、常に共和派を支持している
02. No
quiero eternizar este trabajo.
早いとここの仕事を終わらせてしまいたいよ
03.
Perdona que haya tardado en acabar el trabajo. Es
que no me funcionaba bien el ordenador que acababa
de comprarme.
仕事を終えるのが遅れて悪かったなぁ。新しく買ったばかりのコンピュータの調子が悪くってねぇ
04. Se
pusieron de acuerdo en postergar la fecha del
banquete.
宴会の日取りを延期することで意見の一致をみた
05. Si
viajas a esos países donde el regateo forma parte de
la cultura, no te dejes engañar.
値切ることが文化の一部になっているような国に旅行する時には、騙されないように
06. No
compres nada sin regatear porque siempre tienen
trucos.
値切らずに何も買ってはダメだよ。必ず誤魔化しているんだから
07. Un
cotilla es alguien que se interesa mucho por los
asuntos personales de las demás.
噂好きの人というのは、他人の個人的な問題に非常に興味を持つ人のことをいう
08.
Aquel día mi marido, al regresar del trabajo, se
desplomó en el sofá del salón sin que charláramos un
ratito como solíamos hacer.
いつもなら少しのあいだ仕事から帰ったらおしゃべりをするのに、あの日、夫はソファーに倒れこんだ
09.
Cuando tratas con cariño a los animales,
frecuentemente utilizas diminutivos, como por
ejemplo, en lugar de "duermo con un gato"; "duermo
con un gatito".
愛着をもって何かを語るとき、縮小辞がよく使われます。例えば、「私は猫と寝ます」と言うところを「私は猫ちゃんと寝ます」と言うように
10. El
incendio de Huelva arrasó por completo más de 4.000
hectáreas y varios pueblos fueron obligados al
desalojo.
ウエルバの火事は4,000ヘクタール以上を焼き尽くし、いくつかの村が退去せざるを得なかった