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スペイン語翻訳通訳

Instituto de Traducciones de Tokio

翻訳・通訳学習を通して、本格的に、そして、本腰を入れ、じっくりとスペイン語を学び、実践的なスペイン語能力を身に付けたい、伸ばしたい人のための塾です


Mascota
"Umi-chan"

 

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「海ちゃんと映画」 "Umichan y Cine"  Temporada-III
 
       
 原題名 Death Becomes Her.  製作年 1992
 スペイン語題名 La muerte os sienta tan bien.   カラー
 日本語題名 永遠に美しく…  ジャンル ホラー・コメディ
 製作国 米国  監 督 : Robert Zemeckis
 出演 Goldie Hawn Meryl Streep Bruce Willis
 
 

     

第十九話

 
  ホラーは苦手なのだけど、コメディ仕立てで、しかも監督も出演者も超豪華!ということでスペインのアイチューンストアでポチってみた。0,99ユーロになってたしね。古い映画ばかり見ているのは、安くなっている映画に飛びつくからというのも理由である。この映画ももう29年も昔の映画で、今は超ベテランの年寄り俳優も、当時はまだ若く、のりの良い演技を力いっぱい披露してくれている。それにホラーとは言えコメディなのでそれほどのグロテスクさはなく気軽に鑑賞できる
  誰にでも平等に訪れる「老い」は、生命エネルギーが徐々に衰えていく現象で、ピチピチからシワシワ、ヨボヨボへの移行プロセスだ。死への緩慢な準備プロセスという意味で、神様の取りはからいということもできよう
  別の面から見れば「老い」はとても残酷だ。多くの人々の目を惹く美貌を誇ってきた人気俳優や歌手やモデルであっても、時間の経過とともにその色と艶を失ってゆくのは避けられない。世の男性は若さという輝ける光を放つ女性にどうしても注意が惹きつけられるようにできているらしいから、なんとしてでも老化にストップをかけたい乙女心は理解するに難くない
  エルネスト(アーネスト)は、14年の時を経て元婚約者で妻の友人であるヘレンに再会したのだが、ヘレンが当時以上に若々しく輝いているのを見て、ふたたび熱い思いを蘇らせてしまう
  この優柔不断でなさけない中年男、エルネストを演じているのはブルース・ウィリス、略奪婚で彼の妻になった、マデリンを演じるのがメリル・ストリープ、そしてマデリンに婚約者を奪われたヘレン役をゴールディー・ホーンが演じている。豪華な実力派俳優陣と、軽妙なテンポで展開するストーリーのおかげで、とても楽しめる娯楽映画だ
  この二人の女性は当然ながらエルネストをめぐるライバル同士であり、恋仇である。エルネストとヘレンが再会したことで、二人の間にはオンナの美貌と艶とセックス・アピールをかけたバチバチ戦争が展開することになる
  そして、この二人が「若返りと永遠の若さの秘薬」を飲んだことからこのドタバタの喜悲劇が開始する
  若返って、歌手としてのかつての人気と成功を取り戻したいマデリンも、自分の婚約者を奪ったマデリンに復讐したいヘレンにも、この怪しい秘薬の「恩恵」にあずかりたい動機は充分にあったわけである
  とはいえ、何事も物事には裏と表、ポジティブとネガティブ、陰と陽、物質と反物質、テーゼとアンチテーゼがあり、一面的な思考では結局のところ問題は回避できないのが世の常である
  この秘薬を飲んで、時間を止め、永遠の若さが可能になったとは言え、若さが保たれるのは体が「生きている」間だけ。だから何らかの事故などでうっかり死んでしまったりしてはならないのだ。次には「死」ぬより怖いことが待っている。つまり、心臓がとまっても「死なない」、だけども若さを維持する生命エネルギーは失われて行き、体は徐々にモノと化してゆくのである
  つまり、一旦死ぬと(¿死ぬって?:この映画では心臓が止まっても意識ははっきりしており、体も動くってこと)、モノとしての経年劣化は避けられず、自動修復能力は落ちてゆき、怪我をしたり、骨を折ったり、事故で体がバラバラになった場合、元通りには修復されない。この秘薬が保証するのは永遠の若さではなく、モノ化しても体に宿り続ける「意識」の存続だったのだ
  死んで経年劣化が進めば、指がかけたり、背骨が歪んだり、足が不自由になったり。メッキが剥がれるがごとく、つややかな皮膚は剥がれ落ち、化粧(ペンキ塗り)をしてメンテナンスをしなければならない。ナンギである。かつて外科医だったエルネストは落ちぶれて遺体の修復を生業としていたが、このメンテナンス作業にまさにうってつけの人材である!!体の劣化が進行してしまったマデリンとヘレンはエルネストにもこの秘薬をのませ、殺さないよう大事に取り扱って自分たちの永遠の遺体修復師にしようと企んだのである
  ところが、エルネストはやみくもに永遠の若さを願うことの愚に気がつき、この秘薬を飲むのを拒否、這々の体でこの二人から逃げ出した。人々には正常に時が流れ、年老いてゆくのに、自分だけが取り残されて一人ぼっちになってしまうことに即座に気がついたのである。エルネストはその後、普通に結婚し、普通に子供をもうけ37年後、子供や孫たちに囲まれ老衰でこの世を去るという普通に幸せな人生を送ったのだった
  「自然の摂理に背く」と形容するにはあまりにもバカバカしいラストの映像を見ながら、前世紀の偉大な漫画家、手塚治虫氏のシリアスな作品、「火の鳥」のラストを思い出した。もう何十年も前に読んだのではっきりとは覚えていないけれど、永遠の命を得た主人公が、最後には体もなくなり、宇宙空間にたった一人の「意識体」となり、そこに永遠にたったひとり「存在」し続けなければならないという壮大かつ「絶望」的な結末だった
  そこで浮き彫りにされた「死ねない恐怖」は、当時まだ生命エネルギーあふれる生きる気まんまんの子供だった私に不意打ちのような衝撃を与えたが、同時に説得力があり、斬新でさえあった。普通に死ぬにせよ永遠に死なないにせよ、そこには自分の意志も力も決断も全く及ばない。そのとき私の中に生じたものは自然あるいは宇宙に対する「畏敬の念」以外の何ものでもなかった
  「火の鳥」のあの「意識体」は、その後、たった一人ぼっちでいることに絶望し、その絶望に力を得て、自分の仲間としてあらゆる存在を作った「創造主」になったのではないだろうかという妄想が読了後数十年を経た今になって膨らむ
  本作、「永遠に美しく…」を鑑賞した後は、失敗した遠近法をながめているかのような心地悪さとともに、これまでの価値観が異次元的に奇妙に歪むのを感じた。そして、かつて「火の鳥」のラストに感じた不安や怖れに似た不明瞭な心持ちを再体験した
  「ねぇ、私達、車をどこに止めたかのかしら?覚えてる?」っと相当に劣化の進んだ二人の認知症的を思わせるような会話でこの映画は幕を閉じる。このおふたりさんに救いはあるのだろうか?

海ちゃん:「人間は死ぬのが怖い」というテーゼがあるとするにゃ
アウトーラ:「ある中年のいかにもうだつのあがらない不幸そうなオッサンが『死ぬのは怖くない』と言っているから、中年の不幸そうなオッサンは死ぬのが怖くない」というのがアンティテーゼ
海ちゃん:「死ぬのが怖くても怖くなくても、中年のオッサンであってもなくても、人間はいずれ死ぬ」というアウフヘーベンが引き出せるにゃ
アウトーラ:戯言(ざれごと)!バンザイ! 海ちゃんは猫じゃらしだけじゃなくて、言葉にもじゃつく天才猫ね!!
海ちゃん:にゃはっ!!おホメにあずかりまして。この映画の中ではエルビス・プレスリーの秘密も明かされるにょっ。面白いにょ!

お知らせ
海ちゃん:海ちゃん:この感想文を発表しちゃったら、もう次がありませんにゃ。2020年の春に始まったコロナによるロックダウンと在宅ワークのおかげでいつもより時間ができた僕たちは映画鑑賞にハマりましたにぇ。僕ちゃんは感想文もあったらもっと有意義な閉じこもりライフになるなっと思って、アウトーラに逆猫じゃらしをしかけ、その気になるよう仕向けましたにゃ。うまくいきましたにぇ。でも、僕たちにはまた忙しい日常が戻ってしまいました。この次はいつになるんだろうにぇえ
アウトーラ:「猫の手」って何の役にも立たないことを言うみたいだけど、とんでもない。海ちゃんの「猫の手」は特別仕様の - 肉球がかわいい - 魔法の手です。海ちゃんのアドバイスと激励がなければ感想文を書くことはできませんでした(その気にさせるのがめちゃめちゃうまい)。また、Jijiこと塾頭が「映画の感想文コーナー」を設けてくださったおかげで発表をすることができました。この二人(一匹と一人)には心より感謝しています。そして、拙文を読んでくださった皆様にはほんとうに頭が下がる思いです。ありがとうございました。挿絵を描いてくれたイラストレータのMajoとYuriにもお礼を申し上げたいと思います。ありがとう 。とは言え、これで終わりにするつもりはないので、また書いたら発表します(たぶん2023年以降)
海ちゃん:海ちゃん:それではまたお会いしましょう!できるだけ早く戻って来れるよう、僕ちゃん、がんばってアウトーラを刺激しますにゃ 。皆さん、二年近くもの間、お付き合いくださいましてありがとう!!またお会いしましょうね
 
 

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