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あいまい便利な日本語表現
「面倒くさい」編 ===
週末になるたびに家の中でごろごろしながら、「一生、こうやって過ごせたらどんなに良いだろう」と愛猫海ちゃんをうらやましく思うナマケモノ志向の筆者は、以前から「面倒くさい」という表現が結構好きだ。なぜならこれは私のような面倒くさがり屋にも簡単・便利に使える面倒くさくない言葉だからだ。実際、世の中には「面倒くさい」ことがたくさんあるが、この「面倒くさい」をつけるだけで、それなりに状況や感情を表現できたような気分になれる曖昧さがいい
1) 愛猫海ちゃんの遊び相手をするのは面倒くさいこともある
No siempre es agradable jugar con mi querido gatito, Umichan.
(Me resulta molesto a veces tener que jugar con mi querido gatito, Umichan.)
2) 彼女の愚痴を聞くのは面倒くさい Es un fastidio oír sus quejas.
3) 今日は出かけるのは面倒くさい Hoy no tengo ganas de salir.
4) 隣の住人は面倒くさい奴で皆に面倒くさがられている
El vecino es un chinche que resulta fastidioso para todos los demás.
5) 海ちゃん、あなたってなんて面倒くさいの! ¡Qué pesado eres, Umi-chan!
6) ご近所づきあいは面倒くさい Son complicadas las relaciones con los vecinos.
7) こんな面倒くさい仕事はもううんざりだ
Ya estoy harto de hacer este trabajo tan pesado.
8) お役所の手続きは大変面倒くさい Resultan enrevesados los papeleos burocráticos.
9) 小さい子供に教えるのは面倒くさい No es sencillo enseñar a los niños pequeños.
10) 辞書を引くのは面倒くさい Me da pereza consultar un diccionario.
日本語のほうは「面倒くさい」の一点張りなのに対し、スペイン語では意味内容に応じたさまざまな表現が用いられる。つまり、「面倒くさい」というあいまいな日本語表現に相当するスペイン語表現は存在しないということだ。以上のスペイン語訳はあくまでも例であり、あいまいな表現であるゆえに他にもいろいろな訳し方が可能だ。しかし、「面倒くさい」からそこまではやらないことにする
この「面倒くさい」は、「めんどい」という方言になって日本中で使われており、各地方でその意味が持つニュアンスがよりいっそう曖昧になるというよりも、意味自体も変化してしまうようだ:
1)めんどうだ、めんどうくさい。2)困難だ、難しい。3)気難しい、意地悪だ。4)恥ずかしい 5)じれったい、もどかしい 6)やかましい 7)醜い、見苦しい、体裁が悪い
こんな風に言葉はそのコンセプトがあいまいであればあるほど応用範囲も広く、便利グッズの販売でよく見かける謳い文句のように、「…するだけ!」的な手軽さで使うことができる。また、真意を特定して相手に伝えようとする表現ではないため、車のハンドルで言えば遊び部分が大きく、人間関係の軋轢をさけたり、潤滑油的な役割を果たしてくれたりもする
ファーストフード世代の中学生や高校生らが、「今、方言が新しい」とばかりにそんな方言に着目し、仲間言葉として使い始めている。ますます曖昧になるのだろうか・・・、日本語
こうした潮流のなか、「メシ」「フロ」「ネル」という、この上なく特定的な意味内容をもつこれら三語だけで日常生活を済ませてしまうという世のオヤジ族はなかなか捨てたものではない
Gatito Umi-chan
以上は、本塾のメールマガジン『e-yakuニュースNo.62(2006年01月末発行)』に掲載されたものです |