Fundado en 1995

スペイン語翻訳通訳

Instituto de Traducciones de Tokio

翻訳・通訳学習を通して、本格的に、そして、本腰を入れ、じっくりとスペイン語を学び、実践的なスペイン語能力を身に付けたい、伸ばしたい人のための塾です


Mascota
"Umi-chan"

 

各種お問い合わせ

各種お申し込み

 
 

日西翻訳通訳研究塾は石巻のサン・フアン館を応援しています

「海ちゃんと映画」 "Umichan y Cine"  Temporada-III
 

 

 製作国  イタリア  製作年  1954
 原題名  Dov'è la libertà?
 西語名  ¿Dónde está la Libertad?
 日本名  なし(未公開)
 英語名  Where is the Freedom?
 監督  Roberto Rossellini
 出演  Totò / Vera Molnar / Nyta Dover
   
 

 
 

第三話

 

 

 ふる〜い映画を見ました。1950年代にイタリアで制作された映画です。まだ社会が今のようには複雑化していなかったせいか、ストーリーは単純でわかりやすく、ユーモアもシンプル。悪く言えば同じネタを延々とドタバタやるだけだったりします。現代の私達の感性には垢抜けない印象で、例えて言えばシャワーを浴びてもあんまりさっぱり感のない出来あがりではあります。古い映画の味わいですね

 例えば、前半に延々と続く(はな)(わざ)もないダンスシーンがあり、「時間かせぎ」か、とツッコミを入れながら見ました。あまりに単調なのでこのあたりで見るのを投げ出そうかと思ってしまいましたが、なんと、当のロベルト・ロセリーニ監督は、実際にこの映画の制作をいったん投げ出してしまったらしいのです。理由は知りませんが、監督もこのあたりでイヤになっちゃったのかもしれません。でも、また気をとりなおしたのか、一年後に再開してくれたおかげで私達は今、このアンティーク感あふれる映画を鑑賞することができるわけです

 映画は、殺人罪で22年もの間、刑務所に暮らし、やっと出所してシャバにもどっていた主人公、サルバトーレが再び裁判で裁かれるシーンから始まります。22年の後にやっと保護観察つきの自由を得たのに、うまく社会復帰をすることができずに再び「犯罪」を犯してしまったのです。今回は、公共の建物に侵入(I
nvasión de edificio público)したかどで裁判にかけられたのですが、この公共の建物とは他ならぬ自分が入っていた刑務所施設なのです。彼いわく、自分は侵入(Invasión)したのではなく、避難(Evación)したのだと主張します。どういうことかというと、外の世界があまりにも過酷なので彼はシャバから逃げ出し刑務所に逃げ込んだというわけなのです。「逆」脱獄をはかったわけですね。刑務所というところは公共の施設ですが、無断で入ることも出ることも許されておりません。公民館や図書館とは大違いです

 サルバトーレの職業は床屋で、刑務所でも仲間の髪を切ったりヒゲをそったりして人々の役に立っていました。出所してからも床屋の腕前を生かして生活を立て直そうとするのですが、刑務所にいたことがバレると人々は寄りつかなくなり、どうしても安住できる居場所をみつけることができません。実際のところ、サルバトーレがカミソリを手にお客さんのヒゲをそるシーンが何度もでてくるのですが、コメディーだから絶対に大丈夫と自分に言い聞かせはするものの、見ていて手に汗を握ってしまいました。ムショ出で、しかも殺人罪とあれば世間の目のバイヤスは少々のことでは外れません。愛情問題のもつれとは言え、犯したのは殺人で、その殺人犯がカミソリを手にお客さんや仲間のヒゲをそるシーンはたいへんスリリングです

 1950年代といえばまだナチのホロコーストの記憶も新しい時代です。映画の中で大量の牛が列をつくって屠殺場にむかって進んでゆく映像が流れます。このシーンと、作中人物の「全員タオルと石鹸を手に、裸でシャワー室の前で長い列を作って順番を待つんだ。僕はそこから戻ってきたのさ」という発言とともに、前半のたいくつな展開とは打ってかわり強烈な残像を残します。捕食者である私たちとあの牛たちの立場は真逆なのだけど、視点をかえれば、私達とあの牛たちとの間にどれほどの違いがあるのだろうかと思ったりします。実際、幾多の人々が強制収容所になすすべもなく連行され、そこから戻って来ることはありませんでしたし、実際のところ、私たちはどこから来てどこに向かっているのか納得のできる答えを持ち合わせていないのですから

 何はともあれ、めでたく終身刑を獲得し、サルバトーレは「無事に」刑務所に「収容」されることになりました。そして、ムショの自分のベッドに戻り、安らかな睡眠を取り戻したのです。果たして彼は「幸せ」になれたのでしょうか?


海ちゃん:サルバトーレは幸せになりましたとも。前よりずっと幸せになりましたにゃ。以前、刑務所に居た時には「早く、シャバに戻りたい」と思っていたかもしれません。でも、そう思っている間は「シャバに戻れない不幸」がついてまわりますにぇ。でも、シャバがどんなところかサルバトーレなりによくわかったから、じゅうぶん納得して刑務所で幸せに暮らせるのです。住めば都です♪ にゃ
アウトーラ:海ちゃんもなかなか
FILÓSOFOなのね
海ちゃん:にゃはっ。では、またにぇっ!
 
 

Copyright c 2020 ITT. All Rights Reserved (Reservados todos los derechos en todas las páginas de ITT).