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スペイン語翻訳通訳

Instituto de Traducciones de Tokio

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Mascota
"Umi-chan"

 

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「海ちゃんと映画」 "Umichan y Cine"  Temporada-III
 
       
 原題名 Marie Heurtin  製作年 2014
 スペイン語題名 La historia de Marie Heurtin   カラー
 製作国 仏国  監 督 : Jean-Pierre Améris
 出演 レイ・ミランド / ジェーン・ワイマン / フィリップ・テリー
 
 

     

第十五話

 
  目も見えず耳も聞こえない人のストーリーといえば、ヘレン・ケラーが有名です。ヘレンは1歳半のときに猩紅(ショウコウ)熱で視覚と聴覚を失いましたが、この映画の主人公、Marieは生まれつきの障害として三重苦をもって生まれたので、視覚的、聴覚的な経験がまったくありません。この映画も実話にもとづいているため、ヘレン・ケラーのフランスバージョンと呼ばれたりもしますが、Marieが言葉を習得する道のりは、スタート時点ですでにより厳しい条件下にあったと言えます
  舞台は19世紀初頭のフランスの田舎町Larnay(ポワチエ郡)にある、豊かな田園風景に囲まれた修道院に併設される聾唖(ロウア)学校です。目にやさしく美しい風景は映画の最初から最後まで私達の心に滋養を与えてくれます。これだけでもこの映画は充分に見る価値があります
  自然がくっきりとした輪郭をもって映しだされ、みずみずしい木々の緑、透明な水に反射する光が「生の躍動」を伝えています。映像の点からもとても完成度の高い映画で、Marguerite先生のMarieへのお別れのことば、「Tú, vive」というメッセージが全編を通じて流れているのを感じることができます。Marieは生涯をこの修道院で過ごしましたが、彼女が視覚的にこの美しさを味わうことがなかったのは残念なことです
  フランス語はわかりませんので、この映画はスペイン語で見ました。Marieの教師を引き受けるシスター、Margueritのスペイン語の吹き替えの声がとても愛らしいのです。いちずな思いをまっすぐに伝える優しい声です。女優さん本人のフランス語の声も負けないぐらい愛らしいのですが、スペイン語の声にはさらに繊細さが感じられ、この映画鑑賞をいっそう魅力的にしてくれました。とは言え、聾唖学校でのストーリーですから、手話での会話が主で、喋るセリフはそう多くはありません
  Marieは生まれてからずっと教育を受けることもなく家だけで過ごし、極端に狭い世界しか知らずにいました。両親の存在や家の中の様子は手の感触で知っているだけで、それらのひとつひとつに名前があることは知りませんでしたから、周りのものと自分との関係性が何一つわからない混沌とした世界にいたのです。14歳のときに修道院の付属聾唖学校につれてこられたMarieは、まさに怯える野生動物といえる状態でした。そんな様子のMarieに取り組み 、育くむことをMargueriteは決意します
  目も見えず、耳も聞こえないMarieに物の名前を教えるには「皮膚感覚」に頼るしかありません。でも、「野生児」に触れることはそれだけでも危険が伴います。Marieとの「接触」は、触れ合いというよりは、揉み合い、掴み合い、取っ組み合いの体をはった格闘に他なりません
  当のMarieにとってはもちろんのことMargueriteにとっても、さらには他のシスターたちにとっても毎日が戦場にいるような気分だったことは想像に固くありません。拒否し暴れ続ける相手に心が折れて、ついには、Marguriteも投げ出しそうになってしまいます
  そんな時、Marieは、ついに最初のことば、「Cuchillo」の手話表現と実際の物である「Cuchillo」との間にある関係を理解するのです。そして、あらゆる物には名前があり、あらゆる事象は表現することができることに気がついたのです。ここからの前進には目覚ましいものがありました。そして、Marieは、病に臥せったMargueriteにほんとうに愛おしそうに口づけし、寄り添い、不自由な体で介護するまでに成長したのです
  私たちのように発話による意志の疎通ができないことは、それ自体が大きなデメリットでこの上なく不自由ですが、例えば、表面的な美辞麗句で相手や自分自身を欺いたりはしないということでもあるのです。肉体の目に光が届かず、また、肉体の耳が音の振動を捉えられなくても、だからこそ研ぎ澄まされた心の目と耳が物事の本質をストレートにキャッチするからです。MarieMargueriteの死が近いことを知っていましたし、それを概念としてではなく、心で受け止めていました
  淀川長治さんの「映画って、ほんとにいいですね」という言葉は、こんな映画をみたときに自然に出てきた言葉だったのだなと思いました
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かつて「野生児」だったMarieがエンディング で手話で語った言葉です
Marugueriteのお墓の前で):
Hermana Marguerite, Pienso a menudo en ti.
Todo el día pienso en ti.
Por la mañana cuando me despierto, pienso en ti.
Por la noche cuando me duermo, pienso en ti.
Hasta ahora, he aprendido muchas cosas.
Cuando me veas desde el Cielo, espero que estés orgullosa de mí.
Hoy acaba de llegar una chica nueva.
Es como yo. Es sorda y ciega.
Pero ella es distinta a mí cuando llegué.
Ella no grita. No se mueve.
Huele bien. Huele a pan. Ella espera.
¿Qué espera?
Espara las palabras.
Las hermanas quieren enseñárselas, como tú me las enseñaste a mí.
Yo las voy a ayudar.
Espero que nos hagamos amigas.
Tú y yo fuimos algo más que amigas.

海ちゃん:Marieは犬みたいだにゃ。嗅覚が発達していて、匂いでも人を嗅ぎ分けていたんだにぇ。主人公のMarieを演じたのは女優さんではなくて、一般の方の中から監督が見つけた聾唖者の方だそうですにゃ。この感覚が理解できるからこそのすばらしい演技なのですにゃ
アウトーラ:体の温かみが伝わる触れ合いってすごく大事だってこの映画みるとよくわかるね。触れ合うことで、愛や信頼が築かれて安心するものね。触れ合うことは幼い子供たちには特に大切なのに、コロナのことで、外出先でも、保育園でも、小学校でも、先生や友達はみんなマスクをしてお互いにできるだけ距離をとっているのが現状です。せめて、家庭では充分なスキンシップをしてあげないとね
海ちゃん:僕ちゃんはアウトーラに撫でてもらうと、ゴロゴロ言ってしまいますにゃ。「映画って、ほんとにいいですにゃ」ではまた来月にぇっ!!
 
 

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