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スペイン語翻訳通訳

Instituto de Traducciones de Tokio

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Mascota
"Umi-chan"

 

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「海ちゃんと映画」 "Umichan y Cine"  Temporada-III
 
       
 原題名 Somewhere in Time  製作年 1980
 スペイン語題名 En algún lugar del tiempo   カラー
 日本語題名 ある日どこかで
 製作国 米国  監 督 : ヤノット・シュワルツ
 出演 クリストファー・リーブ / ジェーン・シーモア
 
 

     

第十七話

 
  タイムトラベルというと、髪の毛ボサボサのアインシュタインみたいな博士が作ったタイムマシンで時空を移動したり、偶然できた時空の裂け目からタイムスリップしてしまったりというのがお定まりでした。でも、この映画のタイムトラベルは、自己催眠で変性意識状態に入り自力で移動するというものです。自分が行きたい時代について調べ上げ、部屋の雰囲気を含めてその時代の人になりきり、自分はすでにその時代にいるのだということを完全に受け入れたときに体ごと過去に移動するというものです。その時代のお金を手に入れたり、その時代の衣装を身につけたり、現在のものを自分の目から隠すなどの(めんどうな)準備が必要です。自分で移動するのでマシンが壊れたら帰れなくなるとかの心配はありません。というか、この映画の主人公、リチャードは元の時代に帰って来たくはなかったはずです
  ふたりが初めて出会ったのは、1972年にリチャードが劇作家としての処女作を発表した日にホテルで行われた祝賀パーティーの会場でした。このときエリーズはすでに(私の計算によると)85歳の老女になっていました。エリーズはリチャードに近づき、古い懐中時計を渡して「私のところに帰ってきて」という謎のことばを残してその場を立ち去ります。エリーズのほうはリチャードのことを良く知っていたのですが、この時のリチャードはまだエリーズのことを知りませんでした。リチャードに会い時計を渡して安心したのか、この日の夜、エリーズは亡くなりました
  リチャードはその後、恋人と別れ、私生活にも劇作家としての仕事にも行き詰まり、すべてから逃れるように旅に出ます。そしてエリーズと初めて会ったホテルにふと立ち寄ったのです
  レストランが開くまでの時間つぶしにと、ホテル内の「歴史資料室」の展示を見ていた時、ある肖像にリチャードの目は釘付けになります。美しいご婦人の写真なので無理からぬことですが、彼にとっては特別な懐かしさをともなう強烈な印象があったはずです。その婦人がエリーズ ・マッケナという名前であること、当時有望な女優であったこと、1912年を境に突然演劇界から姿を消したことなどを知ります。さらに図書館で当時の古い資料をあたり、エリーズの身の回りの世話をし、彼女についての本を執筆したロバーツ女史にも会いに行きます。このとき、彼が持っていた懐中時計がエリーズが肌身離さず持っていたものであることを知り、あの老女がエリーズであったことを確信するのです。また、エリーズが繰返し読んでいた本が「Travel Through Time」であったことに驚いただけでなく、その本が自分の大学時代の哲学の先生だったフィニー教授の著書だったことに運命的なものを感じたに違いありません
  リチャードはフィニー教授に会いに行き、直接タイムトラベルの手ほどきを受けます。そして、まさに1912年6月28日、エリーズが主役をつとめる演劇が上演される日に移動することに成功したのです。歴史資料室にあった、あの魅惑的な眼差しのポートレートが撮影された日でした。このポートレートの撮影の様子を見るだけでも映画を見る価値があります。エリーズ役のジェーン・シーモアのこの時の演技は神々しいまでに輝いていました
  過去には行けたもののリチャードが彼女に接近するのは容易いことではありませんでした。昔の慎み深い女性は、男性に言い寄られてもすぐにはYESとは言わないたしなみがありましたし、マネージャーのウィリアムが彼女の側についており、リチャードがエリーズに近づかないように妨害していたからです。それでも、あまりにも真っ直ぐなリチャードからの働きかけに徐々に警戒心はうすれ、エリーズは心を開いていきます。そして、ふたりでいる時の世界はその輝きを何倍にも増すことにエリーズは気づくのです
  ふたりはお互いの気持ちを確認し、幸福感にあふれていました。でも、残念ながらこの幸せは長くは続きませんでした。ホテルの部屋にいるときエリーズの目の前で突然リチャードが消えてしまったのです。1979年のコインを目にしたことが原因でもとの時代に引き戻されてしまったのです。あとには懐中時計が残されていました。エリーズは混乱し取り乱したに違いありません。そのときの衝撃とその後の寂しさが、老女となったエリーズの、皺の寄った表情のない顔に刻まれています。エリーズは懸命にリチャードを探したにちがいありません。ですが、1912年当時、リチャードはまだ生まれてもいないのです
  エリーズによると、マネージャーのウィリアムは、「物事がまだ起こらないうちからそのことを知っているようなところがあるの」とのこと。もしかするとウィリアムも、1912年から見たどこかの未来からエリーズに会いに来ていたのかも知れません
  タイムトラベルものの映画は普通、SFのカテゴリーに分類されますが、自己催眠という方法が秘儀秘教的なものを想像させるからなのか、この映画は当時「オカルト映画」とされ、そのせいで評価が低く興行成績も悪かったといいます。でも、見ていただければわかりますが、この映画は「ラブ・ロマンス」なのであって、オカルト的なテーマに焦点はあてられていません。それに、タイムトラベルはあくまでもフィクションなので娯楽ですし、もとよりタイムトラベルものはツッコミどころ満載です。たとえば、1980年と1912年を往復した懐中時計は誰がどこでいつ最初に入手したのかなんて、矛盾点を突っついてもなんのトクにもなりません。映画のストーリーに信憑性は必要ないのです。印象派の絵画のような美しいシーンもたくさん出てきますし、この映画は、娯楽、芸術、恋愛といろいろな要素を楽しませてくれます
  これ以上はないほど美しい、ポートレートのエリーズ。純真な瞳のクリストファー・リーブ。映画「スーパーマン」では正義の味方として人類を救うためにクリプトン星からやって来てくれましたが、このラブ・ロマンスでもそのまんまで、俗っぽさを全く感じさせません。主演のふたりが「私達は宇宙人です」と言ったら、この地球上の生物とは思えないほど美しい造形ゆえに、「はい、そうですか」と即座に納得してしまいそうです。時間を超える旅と聞いただけで、何百万光年の宇宙旅行や宇宙人の存在にまで思いは飛んでいくので、真昼の妄想に恰好の材料を提供してくれました
  最後は、それなりにハッピーエンドだと言えると思います。年の差が60歳もあるふたりの恋愛が成就するなんてそもそも不可能なことだったのですから
  目に美しく、心に切なくもあたたかい、いい映画でした

海ちゃん:Amor imposibleをposibleにする絶対に効く恋愛成就のお守りはアメリカにはなかったのだにぇ
アウトーラ:そんなお守りがあったら私が欲しい。クリストファー・リーブとケッコンできたかも
海ちゃん:アウトーラはクリストファー・リーブとスーパー・マンが好き過ぎて、目がハートになって手がつけられなくなってしまいますにゃ。クリストファー・リーブについて、これ以上語るのはやめようと思いますにゃ
タイムトラベルものは楽しい!!! ではまた、来月にゃっ!
 
 

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