相関定数(Correlation Constant):
マヤ日数をユリウス日数に変換するために使われるのが相関定数ですマヤ日数+相関定数=ユリウス日数
ユリウス日数−相関定数=マヤ日数
といった関係になります。したがって、相関定数『584,283』というのは、マヤ日数の『0』、つまりマヤ暦元は、ユリウス日数『584,283』であることを意味します
GMT『584,285』とGMT『584,283』がよく知られている相関定数です
16世紀、スペイン人が初めてマヤの人々と接触した頃には、かつてマヤ古典期に石碑、壁、石段、まぐさ石などに刻まれていた長期暦は、もはや使用されておらず、『13Katun(=約256年)』を周期とする短期暦と、『260日暦、365日暦』の組み合わせが使われていました。そのため、マヤ長期暦と西暦を対比することは極めて困難でした
『マヤ暦とは?』のページで紹介しました『Baktun』の位は、その当時もはや使われておらず、『Baktun』という名前もマヤ学者が類推して使っているのです
マヤ長期暦と西暦の関係を知る手がかりは極めて少なく、「メリダ建設の年」だとか、「その頃ある『Katun』が終了した」や、「その頃使われていた短期暦」といった程度の、ほんのわずかに残された情報に基づいて計算されました
20世紀初頭にGoodmanが提唱し、Martínezが修正を加え、さらにThompsonが修正した相関定数が、三人のイニシャルをとって名付けられた『GMT:584,285』です
Goodmanは新聞を主宰していた人で、あのトム・ソーヤーの冒険で有名なマーク・トゥエインの雇い主でした。趣味でマヤ文明の研究を続けていて、引退後にマヤ長期暦と西暦の関係を明らかにしました。後に修正はされたものの、彼の検証でこの件はほぼ落着しました
Martínezはメキシコ人考古学者だったかと思いますが、詳細は記憶していません
Thompsonは、マヤ学の大権威者で、彼が認めなければ何事も決まらないほどでした。その功績は高く評価され英国の爵位を与えられたほどです。サー・エリックです。一方で、彼が反対ないし批判的であったためにマヤ文字の解読が遅れたとの声も聞こえます
『GMT:584,285』とは、マヤ長期暦『11.16.0.0.0 13Ahau 8Xul』を変換基準とする説です
マヤ日数『1,699,200(11*144000+16*7200)』が、西暦1539年11月14日にあたるとしています。Thompsonは後に『2日の修正』をし、相関定数『584,283』、『変換基準日西暦1539年11月12日』を提唱しました。しかしながら、実際のところ、マヤ学者の間で、まだどちらを採用すればいいのか、あるいは、どちらが正しいのかの意見の一致をみていませんので、一言にGMT説といってもGMT:584,285とGMT:584,283の二つの有力な学説があるとしかここでは言えません
その他にも多数の説がある中で、『12.9.0.0.0 13Ahau 8Kankin』を変換基準日とする、モーリーが提唱し、スピンデンに支持された説との間には激しい論争が繰り広げられました。GMT説とは、『13Katun=約256年』もの違いがあります。近年では、考古学だけではなく、炭素年代測定などの科学的データでも『GMT説』が支持されています。それでもなお、確定的な日付は決められないというのが現状です
初学者は読むべしとされている“The Maya”(Fifth edition, Michael Coe)は、同僚のマヤ学者Dr.
Floyd Loundsburyの論拠を示し、GMT:584,285を支持していますが、この数字については、専門化向きだとして、その書物の中では詳しく説明されていません
一方、初学者は読むべしとされている”The Ancient Maya”(Fifth edition、Robert
J. Sharer)は、現在でも一部マヤ高地で使われている暦と一致するので、『GMT:584,283』説が正しいとしています。そのAppendixの中では、マヤ長期暦と西暦の変換の仕方を説明していますが、ミスタイプもあり、トレースは困難です
また、ある人物に、“Skywatchers of Ancient Maya”(Anthony AveniのAppendix)を、検討してくれとAppendixのコピーをいただいたことがありますが、ここでは、マヤ長期暦と西暦の変換の仕方を説明しています。ただ、注意深く検討してみましたが、はっきり言ってこれは間違っていました
わたしの読んだ本の範囲では、『GMT:584,283』を採用しているのは、R.J. Sharerと八杉佳穂くらいで、上記Michael Coeの他、Linda
Scheleなど多数が『GMT:584,285』を相関定数として採用しています。相互の関係は次のようになります
|
マヤ日数 |
GMT:584283 |
GMT:584285 |
暦元 |
0 |
BC3114年8月11日 |
BC3114年8月13日 |
変換基準日 |
1,699,200 |
1539年11月12日 |
1539年11月14日 |
周期の終わり |
1,872,000 |
2012年12月21日 |
2012年12月23日 |
以上のような状況なので、どちらとも決めるわけにいかず、そこで、わたしのプログラムでは、どちらにも対応できるようにしてあります。
因みに、現在のラウンド(周期)はもうすぐ終わります。来る2012年12月21日か23日が、現在のラウンドの終わりの『13.0.0.0.0』になります。また、Linda
Scheleの"The Blood of Kings"という本には 4772年10月15日、マヤ長期暦でいえば次のラウンドの『7.0.0.0.0』に相当する日付が出現します。したがいまして、これらのことも考慮に入れ、わたしの『変換カレンダー』は、次のラウンドの終わりまで計算できるようにプログラミングしてあります